日本で引退生活 遺言状の必要性

引退後は日本でと決めた我家が帰国までに準備していることなどをみなさまとシェアするシリーズです 今回は私がどうして遺言状&エステートプラン を必要だと考えているかについて説明します 日本はお盆ですし、亡くなった義両親について想い出しました 今でも苦しい思いが消えません

遺言状の必要性

遺言状(ここでは日本の遺言状を指します)やエステートプランの必要性を痛いほど感じています 特に我家はこれから日本に帰国すると、日米で資産がわかれます アメリカでは夫婦の財産は残った方が相続するのですが、日本では子どもにも相続の権利があります 夫には前妻の子がおり、家族は日米の国籍が混ざっています 非常に厄介なことになりそうな予感がありますので、遺言状とエステートプランは必須なのです

以前、遺言状やエステートプランは残された家族を守るために必要と書きました そう考えるに至った過去の経験があります

守ってあげられなかった家族


夫の両親は既に亡くなり、随分経ちました 夫は5人兄弟です 生まれた家は数百年以上続いた田舎の旧家です 高齢になるまで田舎の大きな家で頑張っていた義両親ですが、最晩年は長男と同居となりました 田舎では多いと思いますが、長男教 ともいえる長男至上主義の義両親でした 夫の兄は長男で地元の国立大卒業後、上場企業の重役まで務めましたので義両親にとって自慢の息子だったに違いありません 計算違いだったのは、長男の連れ合いの存在でした

年老いた義両親を長男が同居して面倒をみるというのが既定路線だったため、他の兄弟親戚からも異議は全くなく、義両親もどんなにか長男夫婦との暮らしを夢見ていたことかと思います 田舎の家を処分して、長男の嫁の選んだ家を現金で購入してあげたほどです

ところが、義兄はその頃 ヨーロッパ赴任中で、義両親が購入した新居には住むことはなかったのです 義両親、兄嫁の生活があれほどまでに壮絶だったとは他の兄弟も私たちも知る由もありませんでした 義兄ですら、今でも自分の妻が義両親にしてきたことを信じようともしませんし、直視する気もないのです 全てはなかったことにしています

財産は父から兄へ

義父が新居に住んだのはわずか3年未満だったと思います 義父が亡くなった折に、義父の名義だった家の名義を兄名義にすることになりました そして残った預貯金までも、子どもたちで分けることになったのです 預貯金の方はたいした金額ではありませんが、家の方は当時では大変な金額でした 兄と残り4人の分配率は ざっと 兄1億、その他兄弟 2百万 くらいだったと思います

誰がどう考えてもあり得ない分配率ですが、長男教ですからこうなりました 他の兄弟もだれも文句を言いませんし、私共は海外在住ですし従うしかありませんでした ただ、何故、義母が生きているのに義母を飛び越した相続を今するのか理解できなかったので、それとなく兄嫁に聞いてみました 分配に不満があるというわけでなく、義母のものが何もなくなると後々、義母が困るのではないかと 聞いてみたのです そんなことを言うのは親戚でも私だけだったらしく、兄嫁曰く 貴方がそう言っていたことを夫(義兄)に伝えておきましょう と言われました それ以来、私はこの夫婦にとって油断ならない存在と認定されました

義父が亡くなって、義母の頭の上で義兄がどんどん相続の話をすすめるのです 元々は義母の財産です 義父は養子の身なので、義母の生家の家屋敷、土地がそもそもの財産でした 年老いた義母は長男教なので、全て義兄の言いなり、信じて従うしかなかったのです 誰も、義母にそれでいいのか聞いた人はいません 私はそれが不思議でしょうがありませんでした どうして義母の本心をだれも聞かなかったのでしょう 

仕組まれた相続

相続も終わり、義母も幸せに暮らしていると思っていた矢先、義母が養護施設に入れられたという知らせがきました 介護が必要だったわけでもありません 義父が亡くなって半年ほどしか経っていないころのことです あまりのことに驚いて、当時まだ就学年齢に達してなかった息子を連れて、義母の様子を見に飛んでいきました そこは、あまりにも質素な施設で愕然としたのを覚えています 更に、義母の部屋には家具らしいものは何もなく、クローゼットの中には義兄が出張の時に読んだのであろうトラベルミステリーの文庫本が数冊、古くて重い掃除機がぽつんと入っていました

他の入居者の方のお部屋も見せていただきましたが、皆さんそれなりにお部屋らしくなっています お土産のお菓子を食べてもらうにもお茶を入れる急須もお湯呑みひとつありません 仕方なく、自販機で買ってきたお茶で義母、息子、私でお茶とお菓子を頂きました 涙が溢れて止まりませんでした 義母は立派な家の生まれで、息子に豪華な一軒家を現金で購入するほどの財産があったのに、身ぐるみはがされて特別養護老人ホームに入れられていたのでした

後でわかったことですが、義父が亡くなった時に義母を飛ばして子どもに全額相続させたのは、特別養護老人ホームに入れるためでした 義母にそれなりの財産があれば入所できない低所得者向けの施設だからです もっと驚いたのは、施設の方に お母さんはここにいる方がお幸せですよ と言われたことです 義母は幸せそうには見えませんが、兄嫁の異常さはこの施設でも轟いており、職員のみなさま同意見でした あまりにも遅いのですが、私が義母に何が起こったのかを悟った瞬間でした そして、特別養護老人ホームですので数年前から申込んでいたはずです そうでなければこんなに早く入所できるわけがありません

兄嫁と同居している間、義両親は相当な虐待を受けていました 暴力を振るわれたわけではありませんが、私が目撃しただけでも 冬にストーブの上で煮えたぎっている大きなやかんを 足腰も弱って、リュウマチを患っている義母に持たせて、家の中をぐるぐる歩かせるのです 見ていられないので私が手伝おうとすると、兄嫁に怒鳴られます これは義母のリハビリだと言い張ります 義父が購入した家に同居している兄嫁は、義両親から生活費として年金をほぼ全て取り上げていました 義父は公務員でしたのでかなりの金額があったと思います 生活費を取り上げますが、義両親の掃除や洗濯は一切しません そんなことも後でわかったことです

義両親は長男を信じて同居したので、他の子どもたちに愚痴を言ったり、助けを乞うことはありませんでした だからだれも気が付かなかったのです

遺言状があれば


あまりの仕打ちに弁護士の方に相談にも行きましたが、法律上問題なく相続も完了しているので、義母を助けたいのなら アメリカへ連れて行きなさいとのアドバイスでした 義母がそれでいいなら連れて行くところですが、既に高齢で今更アメリカでどうやって暮らして行けというのでしょう 施設の義母の部屋に 拙い字で 帰りたい と書かれた紙を見つけた時のあの気持ち、忘れることができません リュウマチを患った手で震える文字で書かれていました 義母が帰りたいのは生まれ育った家なのです 義兄の為に売り払った家なのです 

もし、義父が全財産は義母に残すと遺言状を残しておいてくれたら こんなことにはならなかったと強く思いました 少なくとも義母が生きている間、財産を守ってあげることができたら あんな可哀想な最晩年にならなかったはずです 義両親は自慢の息子を信じるあまり、兄嫁の人間性にまで考えが及ばなかったのです 結婚以来、義兄夫婦は海外生活が長く、兄嫁とそこまで親しくする機会もなかったと思われます 夫ですら、兄嫁がそんな恐ろしい人とは思ってもいませんでした 義両親も夫の兄弟たちも兄嫁の正体に気付いたのは全てが終わった後でした

遺言状があれば守れたものの中に、先祖伝来の品々もあります 夫の生まれた家には土蔵があり、いつの時代のものかもわからない品々がわらわらと入っていたのですが、その品々は相続の際に全く問題になりませんでした 日本の法律もいい加減なものだと思いました 義兄が蔵の鍵を持っており、価値がありそうなものだけ既に持ちだしていました 義兄の家に行った折に、先祖伝来の屏風、掛け軸などが飾ってあり呆れたことを覚えています 誰の許可もなく、家のものは全て自分のものと言わんばかりです そして、夫には蔵の中にあったからと、虫食いの上、破れてボロボロの掛け軸を渡してきました そんなもの貰ってくる夫もおめでたい人です 


相続の悲劇はつづく

義父が遺言状を残してくれなかったばっかりに、残された義母の生活は可哀想なものになりました 生まれた土地でもなく、縁も所縁もない土地の特別養護老人ホームで馴染めないまま生活し、それからしばらくして亡くなりました 私には後悔しか残りませんでした 

義兄夫婦とは極力係わらないように生活していますが、時折、業務連絡紛いの手紙が届きます ちょうど昨日、その手紙を受け取ってしまったのでこんな長い記事を書いています 夫たちの相続は終わっていないのです 義兄が何を考えてそうしたのかはわかりませんが、蔵と少々の土地を5人兄弟名義で残してあるのです この5人のひとりでも亡くなると、今度はその子どもや配偶者に相続され時間が経てば経つほど、名義人が増えていくことになります 処分するにも全員の承諾と署名捺印が必要になります

僅かですが、固定資産税や保険料もかかっています それらは全て、義母が残したお金で未だに賄っているのです そのレポートを時折、受け取ります おそらく、数百年続いた旧家を兄の代で潰したと言われたくないが為に考え付いた方法なのかもしれませんが、全く意味不明、迷惑でしかありません

義父を責めるわけではありませんが、蔵の中身も遺言状に残すなり、生前に形見分けをしておくべきだったのではと思います 私も愛用の品やこれはという逸品を、死後好き勝手にされるより、生きているうちに喜んでもらえる人に託したいと思っています エステートプランや遺言状には品物についても分け方を記載することができます 高価なものではなくても自分にとって大事なものなら、きちんと行先を決めておかれたほうがいいでしょう


まとめ

相続は揉めるものです お金は人を変えます どんなに手塩にかけて育てた子どもでも、連れ合い次第ではどうなるかわかりません 我家も夫の前妻の子どもたちには、それぞれ連れ合いがおり、まったく油断ならない人たちです 隙を与えることなく、全てを整えておかなくては安心できません 

遺言状やエステートプランは必要ない方もいらっしゃるでしょうが、私はこのような体験から絶対に必要だと考えるに至りました エステートプランは作成済みですが、日本に帰国後は遺言状も作成します 私にもしもの時に、息子を守ってくれる大事なものだと思っているからです アメリカでは、未成年の子どもに財産を全額相続させたりは普通はしません 正しい判断ができると思われる年齢(通常25歳くらい)まで、信託で管理するのが一般的です エステートプランでは両親共に亡くなってしまった場合の、子どもの財産の管理人や養育者なども指定しておけるので、子どもさんのいる方にはエステートプランは特に大事です そんなもの必要な時が来ないに越したことがありませんが、備えあれば憂いなしと私は考えています







2 件のコメント :

  1. 大変つらいお話のシェア、ありがとうございます。
    こういうお話を聞くと、本当に考えさせられますね。
    アメリカ人男性は妻が先に逝った後に、割とすぐに次の連れ合いを見つけることが多く、さらにその後の遺産相続を複雑にさせるので、自分の分の遺産は夫だけではなくて、子供たちに残すことが大事だなと思うようになりました。(というか、夫にある程度の財産があれば、自分の分は子供たちだけに残した方がいいような気もします)

    この辺の事、しっかりと勉強したいので、このシリーズに興味津々です。色々な情報、本当にありがとうございます。

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    1. まいこ さん:

      何事も備えあれば憂いなしですね 自分で出来ることはやっておかなくてはと思っています 

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